大学院創成科学研究科 生物資源学専攻 2年
DINH GIA THIEN(ディン ザ ティエン)
[ベトナム]
10年前、私が住んでいたベトナムの環境は、インターネットで見るようなきれいな風景とは程遠く、道路や海はゴミで溢れていました。そのような汚染された環境で育った子どもたちの健康が損なわれていく様子を見て、私は何かできることがないかと思うようになりました。そこで、「ゴミがない世界で一番きれいな国」として知られる日本に強い関心を持ち、また、漫画やアニメに対する愛情もあり、私は日本への留学を決意しました。
高校卒業後、母国の日本語学校で2年間学び、その後、7年前に徳島大学に入学することができました。しかし、留学生活は決して楽なものではなく、見知らぬ土地での生活は、勉強、仕事、人間関係など、多くの困難を伴う日々でした。若い頃に抱いていた情熱の炎は、次第に小さくなり、「これ以上は無理だ」と諦めかけたこともありました。
「目的のない毎日を過ごすのは、まるで闇の中を歩いているようだ」
そのように感じていた時、私をいつも支えてくださる指導教授が、「君ならできるよ!」という温かい言葉をかけてくれました。その言葉に励まされ、私はまだ自分の人生を立て直すチャンスがあることに気づきました。「小さくなった炎でも、諦めなければ再び燃やせる」ということを周囲の人々から学び、感謝しています。その後、私は自分の人生をやり直すため、さまざまな努力を重ねました。
「日本人の優しさは、テレビで見るものだけではなく、実際にも見えるのだ」と実感しました。
同研究室の友達との桜花見
そして、環境問題の解決方法を探るため、バイオマス活用に関する研究テーマを選びました。ベトナムは農業大国であると同時に、農業廃棄物問題も抱えています。そこで私は、農業廃棄物からバイオ燃料やエコ製品を作り出し、廃棄物を徹底的に再利用する方法を模索しています。この取り組みを通じて、「ゼロ?ウェイスト」の環境を作り、社会の発展に貢献できると信じています。
また、ロータリー米山記念奨学金に申請して無事に受給者として認められたことは、私にとって大きな自信となりました。ロータリー米山記念奨学金のおかげで、生活費の負担が軽減されるとともに、奨学金授与式で地域社会のリーダーの方々と交流することにより、コミュニケーション能力も高まりました。さらに、言語能力の向上を目指し、国際ローターアクトクラブに入会しました。そして、1年後にはクラブの幹事としてボランティア活動に積極的に参加し、「どんな困難な状況でも工夫次第で乗り越えられる」ということを実感しました。
ロータリークラフ?とローターアクトクラフ?の忘年会
このような経験の中で、私は今「縁?運?恩」という循環を感じています。徳島大学に入学できたのが「縁」、奨学金の受給者になることができたのが「運」です。そこで、次は私が「恩」を返さなければならないと考え、現在、学業を頑張りながら、大学の活動や地域のボランティア活動にも積極的に参加しています。
ホ?ランティア活動「International_Fes」
徳島大学に入学したおかげで、悲しみも楽しみもさまざまなことを体験できました。それらの経験をもとに、改めて自分の最初の夢を振り返ったとき、「海外で得た知識を持ち帰り、ベトナムで活躍する」という考えは、今のベトナムには必ずしも当てはまらないのではないかと思うようになりました。なぜなら、現在のベトナムには、高層ビルやきれいな道路が整備されており、知識と技術も十分に発展しているからです。私が今すべきことは、若い力を活かし、ベトナムとつながりのある日本の企業で働くことだと確信しています。これによって、いただいた奨学金の「恩」を日本の社会に返しながら、ベトナムと日本をつなぐ架け橋となることを目指しています。
※本記事表記の所属?学年等は取材当時のものです。