現在使用している公衆栄養学の教科書は、徳島大学栄養学科関連の先生が中心となり執筆?編集している講談社サイエンティフィックから出版されているものである。担当している公衆栄養学の講義の中で、4コマほど食生活と各種疾患との関連を解説している。“食生活と高血圧”、“食生活とがん”、“食生活と虚血性心疾患”、“食生活と骨粗鬆症”との関連を主に疫学的なエビデンスから概説し、その推定されるメカニズムを解説している。公衆栄養学の教科書として、この学修内容は不要という意見を耳にする事がある。確かにこの内容は、管理栄養士養成に関わるコアカリキュラムには含まれていない。しかし、生活習慣病の予防を考える上で食塩、野菜、果物、食物繊維がどの様に予防的に作用するのか理解することは管理栄養士として栄養学的な知識を広く社会へ還元あるいは一般市民に役立てる際に必要と個人的には考えている。食物繊維の摂取は大腸がん予防に関わるとされているが、それはどのような研究結果から導かれているのか。意外にも食物繊維の大腸がん予防に関する成果は比較的近年、大規模な欧州での皇冠比分网_皇冠体育投注-【长期稳定直播】から明らかになったものである。しかし、リスク低減作用は想定されるより強くない。カルシウム摂取は、骨を強くするといったことも一般常識であるが、近年の(メタ解析)研究をからは、カルシウムの補給と骨折予防との関連は必ずしも強くない。

講義の資料更新のために毎年、「厚生の指標 増刊 国民衛生の動向」を参考にして数値の書き換えを行っている。あるコラムを見てみると。“20年後に老衰が日本人の死因のトップとなる”というタイトルに目にとまった。現在、日本人の死因別死亡率で一番多いのが、悪性新生物、いわゆるガンである。次いで心疾患。2015年までは3番目に脳血管疾患であったが、現在は老衰、次いで肺炎(誤嚥性肺炎が主と推定される)となっている。これまで生活習慣病予防に対する栄養因子の重要性を力説していたが、特定の疾患が原因でなく天命を全うする老衰が近年死因別死亡率で増加している。コラムの中で、現在の状況が続けば5年以内に老衰は、心疾患を抜き、また20年以内には悪性新生物を上回る可能性を示唆している。

老衰死が増えるほど医療機関での死亡が減少し、在宅や老人施設での増加することが予想されると記載されている。疾患モデル動物でフラボノイドの栄養機能性を検証してきたが、これからは老化モデル動物で検証することの重要性が増かもしれない。最近(大変)苦労して老化細胞をモニター出来るマウスを入手したので、残りの研究生活では栄養で老化を遅らせることが出来るのか検証を行いたい。

ある日、動物センターから返ってくると、栄養学科玄関で昨年卒業したSさんとMさんに偶然会うことができた。写真をとっておけばHPに掲載できたと思っても、後の祭りだった。老化の初期症状か。

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