徳島大学病院循環器内科の楠瀬賢也講師、佐田政隆教授らの研究グループは、帝京大学大学院医療技術学研究科診療放射線学専攻の古徳純一教授らとの共同研究において、胸部単純X線画像から肺高血圧症を検知し、予後を推定する人工知能(AI)を開発しました。循環器画像領域において、今後のAI技術応用のキーとなる研究であり、肺高血圧症をきたす様々な疾患(COVID-19等)への応用も期待されます。
この皇冠比分网_皇冠体育投注-【长期稳定直播】はロンドン時間2020年11月17日10時付(日本時間2020年11月17日19時付)で英国科学誌 「Nature」の姉妹誌「Scientific Reports」に掲載されます。
?研究の背景
肺高血圧症とは肺の血管(肺動脈)の血圧が高く、息切れを生じる状態を指しますが、血圧計で簡単に測ることができる全身の血管と違い、肺動脈の血圧は侵襲性の高い心臓カテーテル検査でしか測ることができないため、発見が遅れることが多い疾患です。また、肺高血圧症という疾患に慣れている医師や看護師が少ないことも発見が遅れる理由の一つです。
さらに近年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による肺障害から肺動脈圧が上昇することで、患者の予後が悪化することも知られてきており、肺高血圧症診断の臨床的重要性はさらに増しています。
医療現場で一般的に利用され、患者への負担が少ない胸部単純X線画像は、撮影が簡便であり車両にも搭載できるアクセス性の高さに加え、誰が撮像しても同じ画像が得られるという再現性の高さという利点があります。肺高血圧症を疑う際に胸部単純X線画像は用いられますが、専門家の目による検出精度は60%前後であり、より精度の高い方法の開発が望まれています。
我々の研究グループでは循環器領域の医療画像に人工知能(AI)を用いることで、心筋梗塞の同定、心機能の評価に関する研究を行ってきました。本研究では肺高血圧症について、AI技術、特に新しいAIであるディープラーニングを用いることで、心臓カテーテル検査でしか診断できない肺動脈圧上昇を、胸部単純X線画像より精度高く検知可能か、さらに将来の病態悪化が予測可能かを検証しました。
?研究の成果
徳島大学病院循環器内科の楠瀬賢也講師、佐田政隆教授らの研究グループは、帝京大学大学院医療技術学研究科診療放射線学専攻の古徳純一教授らとの共同研究において、胸部単純X線画像を用いることで肺高血圧症を検知し、予後を推定するAIを世界で初めて開発しました。
開発したAI技術を用いて、900症例の胸部単純X線画像および心臓カテーテル検査結果を解析したところ、肺高血圧の有無をAUC(0.5がランダム、1.0に近いほど判定精度が高い)が 0.71(専門医のAUC:0.63)で分類可能でした。この結果はAIの方が有意に高い精度で、特に検証コホートにおいて陰性的中率が95%と高い値を示しました。
加えて、長期経過観察の結果、AIにより肺高血圧の存在が疑われた症例は、そうではない症例と比較し、約2倍の確率でその後の病態悪化が多いことが分かりました。
これらの結果から、ヒトの目で判断するより、AIを用いたほうが肺高血圧の存在のみならず、その後の予後も判定できる可能性が示されました。
また、これまでの多くのディープラーニングによる判断プロセスはブラックボックスであるため、専門家でもAIが出した回答の理由や根拠を説明できないことが問題となっていました。
この問題を解決するために、注目領域を可視化するアルゴリズム(Grad-CAM)を適用することでAIが画像のどこに注目をして判断を下しているかを、胸部単純X線画像上に色の濃淡で表示しました。この結果、AIの注目領域と医師の注目領域が一致していることを確認しました。これにより、本AIモデルがより信頼性の高い「説明可能なAI」として臨床に用いられることが期待されます。
図:左:真に肺高血圧がある(true positive)の症例は右肺上部や心臓周囲にAIが注目しており、
真に肺高血圧が無い(true negative)の症例は両肺門周囲にAIが注目していることが分かる。
?研究の意義
一般的に利用される胸部単純X線画像に本研究で開発したAI技術を用いることで、従来の目視による画像診断よりも高い精度で非侵襲的に肺高血圧を検知し、かつ予後を推定することが期待できます。これは、循環器画像領域において、今後のAI技術応用のキーとなる研究であり、肺高血圧症をきたす様々な疾患(COVID-19等)への応用も期待されます。
本皇冠比分网_皇冠体育投注-【长期稳定直播】は徳島大学病院循環器内科、帝京大学医療技術学研究科診療放射線学専攻の共同研究によるもので、英国科学誌「Nature」の姉妹誌「Scientific Reports」にロンドン時間2020年11月17日10時付(日本時間2020年11月17日19時付)掲載されます。
掲載誌名:Scientific Reports
論文題目:Deep Learning to Predict Elevated Pulmonary Artery Pressure in Patients with Suspected Pulmonary Hypertension Using Standard Chest X Ray
論文著者:Kenya Kusunose,Yukina HirataTakumasa,TsujiJun’ichi Kotoku,Masataka Sata.