最先端研究探訪(とくtalk173号 平成30年10月号より)

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微生物は宝の山!
微生物の潜在能力を活かし、世の中に役立つものを作る

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サプリに含まれるあの成分も微生物が作っています
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徳島大学のオリジナルビール『Very Ale.(ベリーエール)』。皆さんは飲んだことがあるでしょうか?このビール作りに関わったのが、今回ご紹介する櫻谷先生の研究室です。

櫻谷先生はビールに欠かせない酵母などの微生物を使って、人の体にいいものや生活に必要なポリマー(化合物)の原料となる油脂を見つける研究を行っています。

「主にモルティエレラというカビを扱っているんですが、カビの菌糸の中に油の玉があって、その主成分はアラキドン酸という脂肪酸なんです。アラキドン酸は健康食品として利用されていて、微生物(モルティエレラ)を使って作ることができるんです」

アラキドン酸は、魚油に含まれるエイコサペンタエン酸などと同様に人間の体にいいとされるサラサラ油の一種。母乳にも含まれる成分で、最近ではモルティエレラが作るアラキドン酸は、粉ミルクにも添加されているのだとか。

「他にも化粧品や健康食品に使われている 〝スクワレン?という名前を聞いたことがあると思いますが、スクワレンも微生物が作る油の一種。

深海鮫の肝臓から抽出されるもので、鮫と共生している微生物がスクワレンの生合成に関与している可能性があるのではないかと考え、共生微生物の脂質構造決定や生合成経由の解明も行っています」。

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ブルーベリーの酵母から作った『Very Ale.(ベリーエール)』。
徳島大学生協で販売されている。330ml 648円。

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培養可能な微生物はわずか1%!?

世の中で作りがたいものやユニークなものをいかに微生物で作らせるか、微生物の潜在能力をどうすればうまく引き出だせるかを研究しているという櫻谷先生。

そうした微生物を見つけ、実用化を目指し、化学メーカーや食品メーカーとの共同研究も活発に行っているそうですが、産業利用できる微生物を見つけるのはかなり難しいのだとか。

「微生物の中にはモデル微生物というのがいて、基礎研究の中ではそれがよく使われて、いろんなものを見つけ出すのに役立っています。

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微生物採取に出かけたり、研究室の学生たちと研究室旅行へでかけることも。

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例えばノーベル賞を受賞された大隅先生は、酵母のオートファジーの研究をされていますが、あの酵母はモデル微生物。

大腸菌は遺伝子組み換えのツールに使われていたり、それ以外にも微生物はたくさんいるのですが、私たちが活用できるよう、飼い慣らすことができるのは全体の1%にも満たないんじゃないかと言われています。

そんな中でも先ほどお話したモルティエレラというカビはアラキドン酸を作る能力があって、その生産性が非常に高い。例えるならオリンピックで金メダルをとるような微生物なんですね。

そんな菌が見つかると変異をかけたり、遺伝子組み換えをしたりして、育種するんです。そうすることでミード酸やエイコサペンタエン酸など、構造の異なる脂肪酸を選択的に作ることもできるんですが、モルティエレラのようなチャンピオン級の微生物を見つけるのはとても難しい。

珍しい微生物はたくさんいるので、学術論文を書くことはできますが、産業利用となると、至難の業です」。

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微生物を「探す、観察する、応用する」というのがこの研究室。ビールが商品化されたことは学生たちのモチベーションUPにもつながっている。

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藍染めに関わる徳島ならではの微生物研究
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「4年半前、徳島大学に来てからやり始めたのは、マングローブの水域に生息する微生物の探索とか、藍染めに関する微生物の解析などです。

藍染めは徳島の伝統産業ですが、染料のもととなる蒅(すくも)を作る工程にも微生物が関与しているし、蒅を溶かした染液の中にも微生物がいて、本来水に溶けないインジゴを溶けるように還元するような反応は微生物が行っていると考えられています。

藍の染液の中の微生物叢の解析やインジゴの還元に関わる酵素の研究も行っています」。

この他、カビを利用した水酸化脂肪酸生産研究、キノコに関する研究、植物寄生菌に関する研究など、同時並行で幅広く研究に取り組んでいるのだとか。

「微生物は宝の山」という櫻谷先生。微生物の研究はある意味、宝探しのような魅力を内包しているのかもしれません。

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「生体内で重要な役割を担う機能性脂質を微生物発酵で生産する研究を進めています。微生物は、汽水域、花、果実、藍染、深海魚、キノコなど多様なサンプルから単離し、その脂質生産性を評価しています。探索だけでなく、化合物の同定、酵素遺伝子の機能解明、分子育種など様々な実験手法を駆使して研究を行っています」。

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櫻谷先生の研究室の皆さん。

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櫻谷 英治(さくらだに えいじ)のプロフィール

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大学院社会産業理工学研究部
生物資源産業学域 教授

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[取材] 173号(平成30年10月号より)

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