キラーT細胞を産生する分子機構を解明

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報告者

先端酵素学研究所 免疫系発生学分野 准教授 大東いずみ

 

研究タイトル

キラーT細胞を産生する分子機構を解明

 

研究経緯等

【研究グループ】

  • 徳島大学先端酵素学研究所 免疫系発生学分野 髙濵洋介
  • 徳島大学先端酵素学研究所 初期発生研究分野 竹本龍也
  • 東京大学大学院薬学系研究科 村田茂穂

【学術誌等への掲載状況】

Foxn1-β5t transcriptional axis controls CD8+ T-cell production in the thymus. Muhammad Myn Uddin, Izumi Ohigashi, Ryo Motosugi, Tomomi Nakayama, Mie Sakata, Jun Hamazaki, Yasumasa Nishito, Immanuel Rode, Keiji Tanaka, Tatsuya Takemoto, Shigeo Murata, Yousuke Takahama. Nature communications 8:14419 (2017). DOI: 10.1038/ncomms14419.

 

研究概要

【研究の背景】

免疫の司令塔であるTリンパ球は胸腺で産生され、ウイルスなどの病原体やがん細胞を認識し生体防御を担っています。Tリンパ球は胸腺で産生する過程で、病原体などを認識することができる細胞を選別するプロセスである「正の選択」を受け、機能的に有用なTリンパ球が産生されます。Tリンパ球の1種であるキラーT細胞が「正の選択」を受けて産生されるには、胸腺プロテアソームを構成する分子であるβ5tという分子が胸腺皮質上皮細胞で特異的に発現することが必要です。しかし、β5tが胸腺皮質上皮細胞で特異的に発現する分子機構は明らかになっていませんでした。

 

【研究の成果】

遺伝子発現は、ゲノムDNAに特異的に結合するタンパクである転写因子によって制御されています。β5tのゲノムDNA上には、胸腺の形成に重要な転写因子であるFoxn1が結合することができる遺伝子配列が複数箇所あります。培養細胞を用いた試験管内実験で、β5tの転写開始点近傍の配列(site#13)にFoxn1が結合し、遺伝子発現を促進することを発見しました。また、マウス生体から単離した胸腺皮質上皮細胞では、site#13にFoxn1が結合しますが、同じくFoxn1を発現する髄質上皮細胞ではこの配列にはFoxn1は結合しないことを明らかにしました(図1)。さらに、site#13のFoxn1結合配列に変異を導入したマウスを作製し、この変異をホモで持つマウスの胸腺皮質上皮細胞ではβ5tの発現が低下し、胸腺でのキラーT細胞の産生に障害をきたすことを見いだしました (図2,図3)。

 

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今後の展望(研究者からのコメント)

Foxn1による胸腺皮質上皮細胞でのβ5tの発現制御は、胸腺でのキラーT細胞の産生に重要な分子機構であることが解明され、感染症などの免疫システムが関連する疾患の治療法開発につながることが期待されます。

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