報告者大学院生物資源産業学研究部 特任助教 山田晃嗣
研究タイトル植物は侵入してきた病原体を兵糧攻めにして撃退する-植物の新規防御メカニズムの発見と解明-
研究グループ
- 徳島大学大学院生物資源産業学研究部 特任助教 山田晃嗣
- 京都大学大学院農学研究科 教授 高野義孝
- 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科 准教授 西條雄介
- 理化学研究所環境資源科学研究センター ユニットリーダー 中神弘史
学術誌等への掲載状況
- Kohji Yamada, Yusuke Saijo, Hirofumi Nakagami, Yoshitaka Takano
"Regulation of sugar transporter activity for antibacterial defense in Arabidopsis", Science.
http://dx.doi.org/10.1126/science.aah5692
研究概要炭素は生命体を構成する重要な元素の一つであり、植物は光合成により空気中の二酸化炭素から糖を合成し利用しています。しかし多くの生物が炭素を獲得するには、植物や他の生物から有機化合物を摂取する必要があります。細菌や菌類などの病原微生物が感染し増殖する際にも同様で、特に植物に感染する病原体は植物が光合成産物として高濃度に蓄積した糖を主な炭素源として吸収し利用しています。しかし病原体が植物から糖を搾取する一方、植物がそれに対抗する防御手段を備えているかはこれまで明らかとされていませんでした。
今回、徳島大学大学院生物産業学研究部の山田晃嗣特任助教、京都大学大学院農学研究科の高野義孝教授、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科?JSTさきがけの西條雄介准教授、理化学研究所環境資源科学研究センターの中神弘史ユニットリーダーによる共同研究グループは、病原体が感染した際に植物細胞は糖吸収活性を増強させることで細胞外の糖を回収し、病原体の糖へのアクセスを阻害する機構を見出しました。本成果は米科学誌「Science」へ掲載されるのに先立ち、オンライン版(2016年11月24日付)に掲載されました。
今後の展望(研究者からのコメント)今回、細胞外部の糖を回収し病原細菌の糖吸収を阻害する植物の新規防御応答を明らかとしました。病原細菌に限らず多くの植物病原体は炭素源として糖を利用しているため、幅広い細菌および菌類に対してもこの防御が有効であることが考えられます。そのため本成果を基盤とし、植物の糖吸収を高める化合物を発見できれば、より広範囲の病原体に有効な新規農薬の開発につながる可能性があると期待されます。
その他参考となる事項本成果は日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金、科学技術振興会機構(JST)戦略的創造研究推進事業個人型研究(さきがけ)および旭硝子財団助成金の支援を受けて行われました。