顎機能咬合再建学分野 講師 細木 真紀
金属アレルギーについて
- 顎機能咬合再建学分野(高次歯科診療部?歯科用金属アレルギー外来)
歯科治療では様々な種類の金属材料が用いられるが、これを原因としてアレルギーを生じることがある。徳島大学病院歯科用金属アレルギー外来は歯科金属アレルギー患者を対象とした専門外来として1987年に設置されて以来、金属アレルギーに対する検査とその治療を目的とした歯科診療を行っている。本院皮膚科と連携して検査?診断?治療を行うほか,医科歯科の関連医療施設との連携をたもちつつ診療を進めている。
我々のグループは本外来設置当初、一般的には認知度が低かった金属アレルギーについて、本外来における臨床的な疫学調査結果を報告することにより実態を明らかにし、近年流行しているピアスによる金属アレルギー発症の危険性を報告してきた。また、金属元素の微量分析法の確立や、生体親和性が高いといわれているチタンによる金属アレルギーのリスクについても報告してきた。治療時に用いる新規非金属材料の特性等についても検討している。
1.学術誌論文
- Hosoki M, Nishigawa K, Miyamoto Y, Ohe G, Matsuka Y, Allergic contact dermatitis caused by titanium screws and dental implants, Journal of Prosthodontic Research, (in press), 2015.
- 桃田幸弘, 細木眞紀, 二宮雅美, 高野栄之, 松香芳三, 東 雅之,口腔ならびに呼吸器症状を呈した歯科用金属によるアレルギーの1例, 日本口腔検査学会雑誌, Vol.8, No.1, (in press), 2015.
- 細木眞紀, 田上直美, 渡邉 恵, 山瀬 勝, 飯田俊二, 舞田健夫, 大平千之, 大久保力廣, 秋葉陽介, 服部正巳, 峯 篤史, 高 永和, 鳥井克典, 松香芳三, 志賀 博, 市川哲雄,歯科用金属による金属アレルギーの臨床病態と補綴学的対応に関する多施設調査, 日本歯科医学会誌, Vol.34, 44?48, 2015年.
- Fueki K, Ohkubo C, Yatabe M, Arakawa I, Arita M, Ino S, Kanamori T, Kawai Y, Kawara M, Komiyama O, Suzuki T, Nagata K, Hosoki M, Masumi S, Yamauchi M, Aita H, Ono, Kondo H, Tamaki K, Matsuka Y, Tsukasaki H, Fujisawa M, Baba K, Koyano K, Yatani H, Clinical application of removable partial dentures using thermoplastic resin. Part II: Material properties and clinical features of non-metal clasp dentures, Journal of Prosthodontic Research, Vol. 58, No.2, 71~84, 2014.
- Fueki K, Ohkubo C, Yatabe M, Arakawa I, Arita M, Ino S, Kanamori T, Kawai Y, Kawara M, Komiyama O, Suzuki T, Nagata K, Hosoki M, Masumi S, Yamauchi M, Aita H, Ono, Kondo H, Tamaki K, Matsuka Y, Tsukasaki H, Fujisawa M, Baba K, Koyano K, Yatani H, Clinical application of removable partial dentures using thermoplastic resin-Part I: Definition and indication of non-metal clasp dentures, Journal of Prosthodontic Research, Vol. 58, No.1, 3~10, 2014,
- 細木眞紀, 薩摩登誉子, 西川啓介, 竹内久裕, 久保宜明,ニッケル含有ピアスによる金属アレルギー発症の危険性について, Journal of Environmental Dermatology and Cutaneous Allergology, Vol.8, No.1,12~20, 2014.
- 笛木賢治, 大久保力廣, 谷田部優, 荒川一郎, 有田正博, 井野 智, 金森敏和, 河相安彦, 川良 美佐雄, 小見山道, 鈴木哲也, 永田和裕, 細木真紀, 鱒見進一, 山内六男, 會田英紀, 小野高裕, 近藤尚知, 玉置勝司, 松香芳三, 塚崎弘明, 藤澤政紀, 馬場一美, 古谷野潔,熱可塑性樹脂を用いた部分床義歯(ノンメタルクラスプデンチャー)の臨床応用,日本補綴歯科学会誌,Vol.5, No.4,387~408,2013.
- 細木眞紀, 薩摩登誉子, 西川啓介, 竹内久裕, 久保宜明,歯科用金属アレルギーとピアスの関係について, Journal of Environmental Dermatology and Cutaneous Allergology, Vol.6, No.4, 359?367, 2012.
- Hosoki M, Satsuma T, Nishigawa K, Takeuchi H, Asaoka K,A Useful and Non-invasive Microanalytical Method for Dental Restoration Materials, Applied Surface Science, Vol.262, 258~262, 2012.
- 細木眞紀,審美歯科をしてみませんか?!-ちょっとした工夫からジルコニアフレームまで-, 四国歯学会雑誌, Vol.23, No.2, 115?124, 2011.
- Hosoki M, Bando E, Asaoka K, Takeuchi H, Nishigawa K,Assessment of allergic hypersensitivity to dental materials, Bio-Medical Materials and Engineering, Vol.19, No.1, 53~61, 2009.
- Hosoki M, Hosokawa Y, Bando E, Takeuchi H, Nishigawa K, Nakano M,An allergy survey among dental professionals, Prosthodontic Research & Practice, Vol.6, No.1, 34~38, 2007.
- 細木眞紀, 井上典子, 坂東永一, 徳永有美, 西川啓介, 中野雅德, 竹内久裕,歯科用金属アレルギーと口腔内金属の起電力の関係, 日本補綴歯科学会雑誌, Vol.48, No.5, 883, 2004.
- 池田隆志, 吉本有紀子, 村山弥生, 細木眞紀, 鈴木 温, 坂東永一, 中野雅德, 一宮斉子, 濱 昌代, 井上昌幸,徳島大学歯学部附属病院第2歯科補綴科における金属アレルギー患者, 四国歯学会雑誌, Vol.9, No.2, 123?130, 1997.
2.著者
- Contact Dermatitis, Edited by Young Suck Ro, InTech, Croatia, 2011.Chapter 7, Dental Metal Allergyby,p89-108, Hosoki M, Nishigawa K.
- GPのための金属アレルギー臨床,井上昌幸 監修,デンタルダイヤモンド社,東京,2003. 諸病院で改善を見た種々の金属アレルギー症例 Case5 Sn?Zn?Mnによる口内炎,p18-19,細木真紀,坂東永一.
3.総説?解説
- 細木眞紀, 金属アレルギーの臨床的対応の実際,歯界展望,Vol.126,892?901,2015.
- 細木眞紀, 松香芳三,サイエンス-金属アレルギーと歯科-,8020推進財団会誌,Vol.13,52?57,2014.
- 細木眞紀, 松香芳三, 西川啓介,歯科と金属アレルギー Up to Date -チタンもアレルギーを引き起こす!-, ザ·クインテッセンス, Vol.32, No.8, 126?140, 2013.
- 細木眞紀, 松尾敬志, 永田俊彦, 市川哲雄, 松香芳三, 田中栄二,徳島大学病院, 歯科審美, Vol.25, No.2, 196, 2013.
- 細木眞紀, 薩摩登誉子, 西川啓介, 竹内久裕, 郡元治, 久保吉廣, 坂東永一,金属アレルギーとピアスの関係について, 歯界展望, 特別号,185, 2013.
- 細木眞紀, チタンによるアレルギー反応,デンタルダイヤモンド, Vol.38, No.553, 99?101, 2011.
金属アレルギーは接触性皮膚炎の一種であり、遅延型アレルギー反応である。図1に示すようにその症状は多彩である。経皮感作が金属アレルギーの一因として考えられているが、その発症の分子機構は未だ解らないことが多く、その実態を解明するために疫学調査を行ってきた。
図1.金属アレルギーの症状例
疫学調査結果より、ピアスによる皮膚トラブルと金属アレルギー発症との因果関係が疑われたため、患者さんご自身のピアスの組成を分析し(図2)、アレルギー陽性元素と比較検討することで、近年のピアスの流行により金属アレルギーが増加していることを明らかにした。発症の危険性を報告するとともに、欧州連合のような装飾品に対するニッケル含有量の規制が必要であると考えている。
図2.ピアスによる皮膚障害とピアスの元素分析例
一方、新薬や治療法の開発には多角的な病態の解析が必要であり、アレルギー疾患を再現する動物モデルは分子レベルでの解析に非常に有用である。そこで我々は,経皮感作によるニッケルアレルギーモデルマウスを作成し、作成したモデルマウスにおいて図3に一例を示すような炎症性サイトカインの遺伝子発現量を解析することによって、ニッケルアレルギーの感作発現の特性について検討した。本方法を用いて詳細な解析を行うとともに、他の金属元素についても検討し、金属アレルギーの感作発現の特性を検討している。
安価なピアスの不適切な使用によって感作のリスクは増え、今後ますます金属アレルギー患者は増加していくと考えられる。広く世間に警鐘を鳴らすとともに、発症のメカニズムを動物実験で明らかにし、予防や治療のための創薬につなげていきたいと考えている。動物モデルを用いて詳細な解析を行うとともに、金属アレルギーの感作発現の特性を検討していく予定である。