徳島大学大学院口腔科学教育部 口腔顎顔面矯正学分野 博士課程 大学院生 佐藤 南
低出力パルス超音波はドライマウスを改善する
(ドライマウスに対する新規の非侵襲治療法の開発)
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- 徳島大学大学院 医歯薬学研究部 口腔顎顔面矯正学分野 田中栄二
- 徳島大学大学院 医歯薬学研究部 口腔内科学分野 東 雅之
研究の背景
シェーグレン症候群は、中年女性に好発する原因不明の難治性自己免疫疾患の一種であり、国内での患者数は10-50万人にものぼる。ドライマウスはその口腔症状のひとつであり、自らの唾液腺破壊から唾液腺の炎症とそれに伴う唾液分泌量低下によって生じる。治療法としては人工唾液など口腔内を湿潤化することを目的とした対症療法が中心である。そこで我々は、ドライマウスに対する全く新規の治療法として低出力パルス超音波に着目し、炎症状態下の唾液腺細胞およびシェーグレン症候群様モデルマウス唾液腺への低出力パルス超音波照射(ST-SONIC, 伊藤超短波株式会社) を行った。
研究の内容と成果
低出力パルス超音波照射はNFκB経路を抑制的に制御している脱ユビキチン化酵素A20を活性化させることで炎症性サイトカインTNF-αの発現を減弱させ抗炎症作用を示し、水分泌に関与するアクアポリン5の発現が増強することで唾液分泌が増加しうることが示された (図1-4)。したがって、低出力パルス超音波は、非侵襲的にかつ副作用などの弊害もなしにドライマウスを改善しうる有用な治療法であり、従来の薬物療法とも併用が可能である。今後、唾液腺分泌機能に対する低出力パルス超音波照射の奏効率や奏功期間を検討することが必要不可欠であるが、本研究結果は、これまで対症療法のみであったドライマウスの治療現場に、福音をもたらすものである。
今後、患者への臨床応用へと進めていくためには、唾液腺分泌機能に対する低出力パルス超音波照射の奏効率や奏功期間を検討する必要があることから、現在、2週間照射後の効果持続期間を検索中です。
- Minami Sato, Shingo Kuroda, Karima Qurnia Mansjur, Ganzorig Khaliunaa, Kumiko Nagata, Shinya Horiuchi, Toshihiro Inubushi, Yoshiko Yamamura, Masayuki Azuma, Eiji Tanaka: Low-intensity pulsed ultrasound rescues insufficient salivary secretion in autoimmune sialadenitis. Arthritis Research & Therapy 2015;17:278, DOI 10.1186/s13075-015-0798-8.
- 研究論文(3MB)