自己免疫疾患の根本的治療法開発に大きな一歩
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現在、多くの国民が関節リウマチやシェーグレン症候群などさまざまな自己免疫疾患に悩まされています。国民の200人に1人が何らかの自己免疫疾患をもつ といわれ、その医療費は年間約3000億円と推計されています。しかし自己免疫疾患の発症原因はほとんど分かっておらず、根本的治療は極めて困難なのが現 状です。リンパ器官の一つである胸腺のなかには髄質とよばれる部分があります。胸腺髄質に自己免疫疾患の発症を回避させる役割があることは知られていまし た。しかし、胸腺髄質が形成される分子機構はこれまで大きな謎でした。
今回の研究は、自己免疫疾患の原因解明と画期的治療法の開発に向けて大きな一歩になると考えられます。
胸腺は、免疫応答に不可欠のTリンパ球を生成する臓器です。また、生成するTリンパ球が自己免疫疾患を起こさないようにする臓器です。本研究で得られた 成果をもとに、胸腺を人工的に再生したり、Tリンパ球を回復または強化させたりする研究へと展開していくことで、関節リウマチやシェーグレン症候群など難 治性の自己免疫疾患を根本的に治療する方法の開発がもたらされる可能性が期待されます。
題目:The cytokine RANKL produced by positively selected thymocytes fosters medullary thymic epithelial cells that express autoimmune regulator.
邦題:正の選択をうけた胸腺細胞に産生されるRANKLは自己免疫制御分子を発現する胸腺髄質上皮細胞を養育する
著者:Hikosaka Y, Nitta T, Ohigashi I, Yano K, Ishimaru N, Hayashi Y, Matsumoto M, Matsuo K, Penninger JM, Takayanagi H, Yokota Y, Yamada H, Yoshikai Y,InoueJ,Akiyama T, Takahama Y.
なお、9月19日付けImmunity誌には上の論文とともに、下記のように、東京大学医科学研究所の秋山泰身講師らによる論文およびジュネーブ大学医学 部のWalter Reith教授らによる論文が同時掲載されます。上の論文とも密接に関連する胸腺髄質形成機構に関する発見を報告するこれらの論文には、徳島大学の高浜教 授や新田特任講師らも重要な貢献を示して共同研究者として参画しています。国際的に評価の高いImmunity誌への3論文同時掲載は、これら胸腺髄質形 成機構の発見に対する評価の高さを示すとともに、我が国および徳島大学の免疫学研究とくに胸腺研究に対する世界的な注目を示しています。
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題目:The tumor necrosis factor family receptors RANK and CD40 cooperatively establish the thymic medullary microenvironment and self-tolerance.
邦題:自己寛容を制御する胸腺髄質微小環境形成におけるRANKとCD40の協調作用
著者:Akiyama T, Shimo Y, Yanai H, Qin J, Ohshima, D, Maruyama Y, Asaumi Y,Kitazawa J, Takayanagi H, Penninger JM, Matsumoto M, Nitta T, Takahama Y,Inoue J.
題目:Mature Aire+ mTEC expansion is controlled by antigen-specific TCR-MHC class II mediated interactions with autoreactive CD4+ thymocytes.
邦題:自己免疫制御性胸腺髄質上皮細胞の増加は自己反応性CD4T細胞との抗原特異的相互作用によって制御される
著者:Irla M, Hugues S, Gill J, Nitta T, Hikosaka Y, Williams IR, Hubert FX, Scott HS, Takahama Y, Holl?nder GA, Reith W.