糖輸送の制御を介した植物の新規防御機構の解明

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報告者

徳島大学大学院社会産業理工学研究部生物資源産業学域生物資源生産科学分野 助教 山田 晃嗣

研究タイトル

糖輸送の制御を介した植物の新規防御機構の解明

研究経緯等

【学術誌等への掲載状況】
1. Yamada K, Osakabe Y, Yamaguchi-Shinozaki K. (2017) A C-terminal motif contributes to the plasma membrane localization of Arabidopsis STP transporters. PLoS ONE 12(10): e0186326.
2. Yamada K, Saijo Y, Nakagami H, Takano Y.(2016) Regulation of sugar transporter activity for antibacterial defense in Arabidopsis. Science 354 : 1427-1430.
3. Yamada K, Yamashita-Yamada M, Hirase T, Fujiwara T, Tsuda K, Hiruma K, Saijo Y. (2016) Danger peptide receptor signaling in plants ensures basal immunity upon pathogen-induced depletion of BAK1. The EMBO Journal 35 : 46-61

研究概要

 植物は光合成により無機化合物の二酸化炭素から糖を合成する。しかし、その他の多くの生物は有機化合物を他の生物から摂取することでしか炭素を獲得することができず、植物病原菌も感染時に植物から糖を吸収している。その一方で、植物が病原菌の糖摂取を阻害する機構を備えているかはこれまで明らかにされていなかった。そこで我々は、「植物は細胞外の糖を回収することで病原菌の糖吸収を阻害している」と仮説を立て、免疫応答活性化時の植物の糖吸収活性の解析を行った。植物は細胞膜に配備している受容体を介して病原菌を認識する。本研究では、それらの病原菌認識受容体により糖輸送体STP13がリン酸化されることを見出した。そしてそのリン酸化はSTP13の糖吸収活性の増強に繋がり、細胞外の糖の量を減少させることで病原菌の糖摂取を阻害することが示された(下図)。

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今後の展望(研究者からのコメント)

 今回の研究により、植物が病原菌の栄養摂取を阻害していることが明らかになりました。病原菌は糖以外にも様々な物質を宿主植物から吸収しており、それらを巡っても植物-病原菌間での競合が起きていることが予想されます。今後、栄養吸収競合の全体像が明らかにされていくとともに、栄養吸収を標的とした農薬の開発など、新しい病原菌の防除法の開発が期待されます。

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