平成27年度徳島大学入学式式辞
平成27年4月6日(月曜日)
会場 アスティとくしま
新入生の皆さんご入学おめでとうございます。また新入生のご家族や関係の皆様方に対し、徳島大学を代表いたしまして心よりご入学のお祝いとお慶びを申し上げます。
今、世界は大きく揺れており、また世界のあちらこちらに危機的状況が多くみられます。言いかえれば、急速に進むグローバル化と並行して、社会の複雑性、多様性危機状態が進行している現状において、世界レベルで解決しなければならない多くの問題が山積しています。
皆さんにはこのようなある意味混沌としている時代ですが、是非、有意義な4年間あるいは6年間、自分を見失うことなく楽しい学生生活を過ごされることを願っています。
現在、大学は「日本再生」というキーワードのもとに、大きな改革が行われています。日本を再生に導くためには、人材育成が最重要とされています。すなわち、「日本再生」には「人材育成」はなくてはならないものです。その人材育成は、大学界をはじめとする教育界に求められています。
今まで皆さんは小中高を通じ、多くの「知識」を身につけてきました。しかし、その知識を生かしているでしょうか。「知っている」というだけでは本当の知識とは言えません。「知っていて行動できる。行動した。」という段階までいかないと知識を生かしている、知識を生かしたとは言えないのです。さらに、皆さんは今まで正解のある問題ばかり解いてきました。大学は自分で課題を見つけ、正解のない問題にどう対処するかを学ぶ場所です。単なる知識を詰め込むところではありません。
皆さん、あらためて学力の3要素を考えてみましょう。1つ目は「知識?技能」です。2つ目はその知識?技能を活用し課題を解決する能力、すなわち「思考力?判断力?表現力」です。最後の3つ目は「主体的に学習に取り組む態度」です。言いかえれば、学習に対する「関心?意欲?態度」が重要です。そしてそれには学習する人の「主体性?多様性?協働性」が要求されています。
昨年10月、本学工学部出身のアメリカカリフォルニア大学サンタバーバラ校教授である、中村修二教授がノーベル物理学賞を受賞されました。本学の教職員はもとより、在学生、卒業生にとっても大変名誉な出来事でした。
ところで、1973年ノーベル物理学賞の江崎玲於奈先生の「ノーベル賞をとるためにしてはいけない5ヵ条」についてお話したいと思います。
第1は、今までの行きがかりにとらわれてはいけない。しがらみを解かない限り、思い切った創造性の発揮などは望めない。第2は、教えはいくら受けても結構だが、大先生にのめりこんではいけない。のめりこむと、権威の呪縛から逃れられなくなり、自由奔放な若さを失い、自分の創造力も萎縮する。第3は、無用なガラクタ情報に惑わされてはいけない。我々の能力には限りがあるので、吟味された必須の情報だけ処理する。第4は、創造力を発揮して自分の主張を貫くためには、戦うことを避けてはいけない。第5は、子供のようなあくなき好奇心と、初々しい感性を失ってはいけない。
これら5ヵ条は、ノーベル賞をとるためとは関係なく、大学生活のみならず、社会生活においても共通する教訓であるといえます。
最後に教養的知識の重要性について述べます。教養とは広辞苑によれば「単なる学識?多識とは異なり、一定の文化理想を体得し、それによって個人が身につけた創造的な理解力や知識。その内容は時代や民族の文化理念の変遷に応じて異なる」とあります。
皆さんは大学に入り、早く専門教育を学びたい、専門知識を身につけたいと思っていると思いますが、現代のように世界が狭くなり、全てが多様化し、変化し続け、複雑化する状況においては、専門知識、技術だけでは解決できない問題が山積しています。それには問題の本質を見極める能力が必要となります。すなわち幅広い知識と、物事を多くの違った様々な角度から見ることができる能力が要求されるわけです。この能力こそが教養といえます。是非皆さんにはこのような能力に加え、物事を俯瞰的に見ることのできる力を教養教育を通じて会得されるよう願ってやみません。
皆さんのこれからの大学生活が、豊かな自然に恵まれた徳島で楽しく有意義なものとなるよう祈念して、平成27年4月6日、諸君の記念すべき入学式に際してのお祝いの言葉とします。